2008年4月13日

リスクマネジメント

リスクという言葉は浸透してきた。
しかし、リスクを「ゼロにしたい」「できるなら避けたい」としたら、それはとても残念な事だ。私にはそれは「仕事をしたくない」「何も挑戦したくない」というのと同じ響きに聞こえるからだ。
そして、想定しうるリスクが実際に発生したとする。その頻度についてもインパクトについても当然想定済みの事だ。
しかし、実際には適切な監査や改善を考えもしなかった甘い汁だけを吸っている外野が突然口を出してきて、糾弾し、責任転嫁し、排除する。声高に「リスクをゼロにしろ」と叫ぶ。そして、「プランは最高だった。オペレータが無能だった。」という最初から準備された結論を口にし、改善すべき全てのものから目を逸らす。
品質は大切だ。
防げるトラブルは未然に防ぎたい。
しかし、経営資源は有限で、時間はそれ以上に有限だ。
たとえば、全ての工程をカバーする、完璧にイレギュラーケースを想定しつくした手順書が完成したとする。しかし、読み込むのに1週間かかるとして、その手順書を1時間の作業に用いるのは適切か?トラブルを起こした際に、「手順書に従わなかったから」という原因判断は正しいか?
たとえば、完璧に作業を理解するためには1年の研修を要する作業だとする。たった一日の作業のために、下請企業負担や作業者負担で研修を必須と強制するのはまともな企業のすることか?
そして、そこまでやったとしてもリスクはゼロにはならない。あたりまえだ。
プランは完璧だったといわれ、切られるオペレータは報われない。
平気でこんな事を要求するリスク管理者がいたとしたら、その人の下では仕事が成立しない。
だから平時仲良くしているお客様相手でも、契約時にはリスクの確認はするし、それはその会社を信用していないわけでも、いちゃもんをつけたいわけでもない。リスク管理の問題は、何か起こるまで水面下に潜む事が多く、なるべく目をつぶりたいと考えがちな問題だから、取引に際に提起するのは自然な事なのだ。
そして、何よりも問題なのは、そういう「プランは完璧だった」というリスク管理者からはけして実情が経営まであがる事が無いという事だ。これは、経営者からすると何よりも恐ろしい。現状から目を逸らすリスク管理者の下でマネジメントが回っている事などありえないからだ。
外野で、何か起こると実情も知らず大騒ぎする人は必ずいる。そういう人は大抵責任も取らないし、カネも出さないし、時間を使う事も無い。ただ大声を出す。時々重要なポジションにいたりもする。
しかし、そういう人に配慮?して、現実から目を逸らし、カンペキでしたという管理者がいたら、経営者からオペレータまで全ての関係者にとって不幸だ。大声を出した外野だけがヨシヨシといっていても仕方ない。大企業なら幹部がテレビの前で頭を下げる日も遠くないだろう。
仕事をする以上、リスクは発生する。どれほど酷い現実でも正面から見つめて、対策を考える。
それがリスクマネジメントだ。