2005年7月24日

《財務》

経営を司るものとして、次代のステップを踏むためにどうしても乗り越えなければならない壁がいくつかある。
その一つは間違いなく「資金」の壁だろう。
特に当社のように小資本から始めたベンチャーであれば、間違いなくこの壁は厚いものとなるだろうし、財務に弱い経営者では勢いがあるほど危険でもある。
なぜなら、小さな規模で軽いマイナスが生じたとしても、「自分の給料を遅らせる」や、「自分の貯金を取り崩す」といった、社長マターで解決が可能であるステージから、一気に個人ではどうにも解決できない金額へ踊りだすからである。
当社の「今」はまさにこうしたステージであり、今期はこのテーマとの戦いになるのではないかという危惧もある。
解決するために考えなければならないことはいくつかある。
一つは月次の資金の出入りを詳細に掴む事。一つは請求書などはなるべく前倒しで処理し、ワントラブル起きても入金が遅れる事態を避ける余裕を持つこと。一つはあまりギリギリの勝負をかけないこと。短期資金を調達する手法を確立すること。そして最後に、これが一番大事なことだが、財務に強い人間を入れること。
入り口でいつまでも躓いているわけにはいかない。

世間がきちんとしている、と思っている会社であっても内情は目も当てられない。という事は本当に良くある。どの会社であっても理想とするところが10点であって、最低限守っていて当然だろうというラインを5点とすると、3・4点といったところではないか?
どんな企業家であれ、経営者であれ、目指すところはもちろん10点であろうが、それでも3・4点で留まるのはなぜだろう。
一つはコストの問題である。世間が常識と思っているサービスのコストは、常識よりはるかに高い。大きな企業であれば、大量生産や豊富な現金取引、ブランド力によってコストを引き下げ、さらに表面上は常識の仮面をかぶることが可能だ。
もう一つは、人材の問題である。世間が常識と思っているサービスを担う人材の質は、仕事人として自分が客観的に評価されている質よりもはるかに高い。つまり、自分にはできそうに無いサービスを人には求めてしまうものなのである。
つまり、資金も人材力も乏しい小さな企業が、世間から最低限と見られる5点を取るのは本当に難しいことなのだ。
さてここまで書いていて、自分の会社を振り返ってみてどうだろう。やはり最低限にまでまだまだ届かない。きっとまだまだお客様にもスタッフにも迷惑をかけてしまうだろう。しかしながら、いや、だからこそ、頑張らねばと思う一方、多くを期待してしまう。
当社はまだまだ働いてくれるスタッフにもっと多くの報酬を出していきたい。たとえコストが高くなっても、サービスの質を高めるために、人材の質を高めるために。
それにはまず、自分の質を高めることだ。自分が動けばコストは下がり、サービスの質が上がる。背中を見せることからはじめよう。いつか続いてもらうために。
そして眠れない夜は続く。

当社が利用しているレンタルオフィスの社長さんのコラムを読んで一つ。
http://www.hakuoh.co.jp/column.php
そう。まさにそのとおり。
自分がお客様サイドの時には、ニコニコと丁寧な人であっても、タクシーやウェイターや下請け業者になるととたんに横柄になる人がいて、私もそんな人と付き合いたいとは思わない。
さらに、私が「社長」であることをどこかで知った後に、もう一転して丁寧になられても、その人の本性は知った後だ。私は私に丁寧に接して欲しいわけではない。クライアントやヘルプセンターであれば、うちのスタッフに「丁寧に対応していただいているか?横柄に命令しているか?」ということが重要であるし、うちのスタッフであれば、お客様に対し「マナーを守れているか?不快な言動や態度を取っていないか?」が重要なのである。
だから、私も電話を取り次いでくれる人、受付で対応してくれる人、一人一人に丁寧に接する。
当然、普段から心がけるようになる。お店で「ご馳走様です。」タクシーで「短い距離でもよろしいですか?」つまりは、心がけである。
一回、きちんとした会社に勤めた人ならわかるのだ。
「何かを繋いでくれている人は機械じゃない。」一人一人が何かを感じ、その後の大きな仕事に響いていくということを。

多量の雑務を一人で抱え続けてはいけない。
以前から改革の必要性を強く感じていたことである。
いつも気になっていたのはコスト。
十分に必要性は感じながら、それでも専任で事務スタッフを用意する訳にはいかない。
そこで我々が決意した答えは、「信頼できるスタッフに少しづつ雑務を割り振るしかない。」というものである。
分業の効率性から考えれば、望ましい方策ではない事はわかっている。しかし、我々の、何よりも私自身のキャパティシーを越えてから手を打つのでは遅いのだ。
いずれにしても将来うちの格となる人材にバックを経験してもらうのはマイナスにはならない。
まだまだ「自分が行った方が正確で早い」と感じることも多いだろう。しかし、「信頼して任せることができる」というのは組織管理者として必須の能力である。
新たに発生する負荷に対しきちんと目に見える形で評価できるかということも、任せる側が担う義務となる。
今十分に報いることができなくても、自分たちが関わる組織なら報いられるかもしれない。そんな可能性もバックに携わる魅力の一つではないか。
初めて向かえる過渡期といえる。

事業というのは、絶えず何かしらの条件との戦いである。
「余裕資金が100万しかないから、月20万1人にかかるとして1日5人以上使えない。」や「業界全般的に暇な時期だから、仕事を取ってくることができない。」など、当社規模ではどの段階でもそれぞれの悩みはそれなりに深刻に起こりうる。
しかし、そこを「とりあえずBしてみる。Aが必要であれば、必要な時点で何とかAする。」という発想こそが、明確な実行力につながるのだと思う。1日5人、と縛ることからはじめるのではなく、依頼がくればまず請ける。その結果資金がショートしそうなら、補充する方法を考える。補充もできそうに無いなら、その後の人員を調整してみる。つまりは後ろで発生するリスクを恐れずに進むことだ。
仕事が無いのを時期のせいにだけしないで、クライアントを増やしてみる。地域を広げてみる。という努力をまず行うことだ。実行した結果ダメでもそれはそれでいいのである。動いた分の表面部分が「攻めいている」印象をまわりに与えるのだし、それが今期待するものに達しなくとも次に活きることにつながる。
さて、こんな書き方をすると、「条件など考えずDo It!」と聞こえるかもしれないが、そうではない。責任者はリスクを管理する義務があるからだ。無策で走った結果、どうにもならなくなる。というのであれば、管理者失格である。Aに限らず、起こりうるリスクは想定し、できれば解決する方法を考える。が、Aを知りつつそれでもBする。Bをした以上、なんとかAする。もちろん走り出したB自体、当初の予定通り行かなくなることもある。ぶれることもある。
しかし、次を望むなら、ぶれることを恐てはいけない。歯を食いしばって行ったBはきっと次のステップを導いてくれる。