2005年12月28日
当社のような創業ベンチャーでは、どうしてもオーナーのワンマン経営になってしまい、組織の権限委譲というのは難しいテーマになる。
当社においても、情報の共有と権限委譲については早い時期から少しずつ実践しているテーマの一つとなっている。
組織が大きくなってくると、トップが処理する情報量が膨大になり、ピラミッド型の決済システムでは時間がかかり、かつ人を経由する毎に情報は選択劣化していくためクライアントや現場の情報が正確に伝わらなくなってしまう。
変化する情報にすばやく正確にレスポンスするためには、中級指揮官がその場その場で判断できる権限を必要十分に与えていく事が必要になる。一方、会社全体の品質を一定に保つために現場で行われる判断・サービスが全社的に共有されなければ、組織的なブランドを確立する事が難しくなる。
また、判断する「権限」と共に付与しなければならないのは「能力」になる。技術的なエンパワーメントは、本人のモチベーションも大切であるが何よりも教育が大事だろう。
こちらも当社にとって重要なテーマの一つとして早期から取り組んでいるがまだまだ十分に行えていない。現場作業者としての作業能力はもちろんであるが、様々な階層で判断を行う管理者としては必要な能力を身につけるための教育が不可欠となる。
急拡大している最中ではついつい「何もかも」と云う気持ちになるが、エンパワーメントは一朝にして行えるものではない。一歩一歩前進あるのみと云える。
2005年12月18日
経営者になってそれまでと一番何が違うかと云われると、キャッシュフローに対する感度が違うと思う。
一般のサラリーマンであれば、働いて→お金をもらう→その資金の範囲で消費→収入より大きい消費をする時はローンを組む。というお金の流れが一般的だろう。
これが経営者になれば、資金を投下し→売り上げて回収→資金を再投下。というお金の流れになり、これがずっと繰り返される。
資金の流れ方が違う事により、資金量を増すための手法が変わる。
サラリーマンであれば、労働価値をあげて、もらう金額を増やし、消費を抑えれば資金量は増す。
経営であれば、投下した資金量よりも多くを回収する事と、投下回数を増やし早期に回収する事によって資金量が増す。
「たくさんもらう事」は両者共に共通であるが、資金の使用についてはサラリーマンは「抑える」、経営は「回数を増やす」と資金の増やし方に根本的な差がある。ここにキャッシュフローに対する感度についてサラリーマンと経営者に決定的な温度差が生じる事になる。
特に「借金」に対する捉え方に大きくかかわり、サラリーマンでいる借金とは自らの労働力で返済すべきマイナス分と云うものであるのに対し、経営者では投下する資金量が増す事は回収量も増やす事になり、また投下回数も増やす事になるために「投下資金量よりも多くを回収できる」という前提さえ崩れなければ、プラス要因の方が大きい。
前職で証券にいた頃、経営指標を他人事のように見てきたが、実際経営者になると新鮮な感度として資金のフローについて考えさせられる。経営者が借金嫌いでは務まらないのが会社と云うものなのだ。
2005年12月14日
誰もが感じているように「悪い事」は連鎖するもので、一発目の失敗が起こったときよくよく気をつけねばそれをきっかけにして次々と失敗を重ねてしまう。
一つ一つは別の次元のミスに見えてしまうものであるが、要が揺らいだために、あるいはほんの些細な事をきっかけにして、繋がっているものなのだ。
12月もまさにその通り。「忙しい」というのを前面に押し出して危機管理が異常にゆるくなっている。現場の人手が足りないために自らの現場出動頻度が高くなりすぎている。マネジメントができないため、入出金や人材管理などの基幹業務が甘くなり、それがミスに繋がる。一つのミスをフォローするためにコストや時間を取られ、そのためにミスが重なる。
結局、解決方法としては煩雑になってしまっている仕事のうちで、「大切な事」を峻別してまずは一つ確実に消化する事である。そしてもう一つは、無理な受注をして大切な業務に影響が出る事を可能な限り避ける事だ。本心ではどうしてもクライアントが困っていれば助けてあげたい。しかし、目先の為だけに無理をして品質を下げていく事は長い目で捉えるとけして最良の選択肢といえない。
連鎖するのはミスだけではない。カネやヒトの資源を上手く切り回す事ができれば、忙しさはそのままチャンスに変わる。
まずは一つのミスをくい止めて、一発目の「良い結果」を出す事だ。
言い換えれば、「下降トレンド」は、速やかに損きりするべきだということである。そして重要度の高いもので、しっかりと成功を収めて、「上昇トレンド」に切り替える必要があるのだ。
今が本当に大事な時だと云える。
2005年12月9日
社長になった動機について考えてみた。
「お金持ちになりたい。」「ヒルズで仕事したい。」とは実はあまり考えた事はない。
もちろん、お金はあったほうがいいと思う。特に今は苦労しているから。いい環境も整えたい。それは見栄という部分も無いわけではないが、もっと実利的な面で色々と必要に迫られている点を改善していきたいからだ。
「人から指示や命令を受けたりするのがキライ。」「他人の上に立って仕事したい。」と云うのもそれほど重要の事ではない。
元々上下関係の意識が希薄なので、管理者と実行者はそれぞれ役割が違うだけでそもそも上下と云う意識はあまり無い。縦社会になじんだ管理者からは使いづらいとは思うが、指示が理不尽で管理者の権限から外れていれば従うつもりは更々無いし、組織的にそういう風習であれば、組織を移る権限を行使すればいい。自分が組織化した今の会社でも考え方はあまり変わらない。自分の子供が生まれたから、社員全体で万歳する、という会社にしたいと思った事は一度も無い。
それでは、「どんな事が動機なの?」
絵的に美しい動機は無いのだが、自分が一番自分らしい環境で働いて、自分の関わったサービスがお客さんに喜んでもらえて、成功したらその果実に見合った報酬が得られて、気のあった仲間と刺激的な毎日が送れるといいな。と思っていたら、中々、自分が思うほどに自分の考え方を受け入れてくれる社会と云うものが無くて、自分には自分のいる場所を組織化する能力と決断力があった。と云うことである。
「会社を創ろうかな。」というテーマができた後の視点は、複数に分かれる。
「個人日向」は、まず自分が食べられる事。次に家族をもてるだけの所得を得る事。その後、会社のみんなの生活を守れる会社にする事。最後に社会に貢献できる会社へ成長させる事。と云う。
「投資家日向」は、投下した資金量や商品日向の労働価値から考えて、他の投資案件より効率的なリターンを得るためにはどうすればいいか。現在のトレンドで得られる小さな利益よりもこれから来る上昇トレンドに対応できる投資案件に「会社」を育て上げねばならない。と云う。
「経営者日向」は、法人企業の存在意義は、投資家・顧客・社員・関係者の満足を極大化させること。と云う。
他にもそれぞれの視点から見た日向がいて、全員に共通する思いがあった。きっとそれが一番強い部分の動機なのだろう。
「まずは、やってみてから考えよう。」
気がつくと社長になっていた。ドラマチックにならないが、社長になることは普通の事なのでそれほど強い動機が無くてもいいのだと思う。
2005年12月8日
組織を運営する以上、支持を与えたり報告を受け取ったりする伝達業務は管理者の中核業務になる。
部下や下請け業者がミスをする時、そもそもこの伝達が上手くいっていない事が多いのであるが、伝達業務の責任所在は、指示・報告受取を含め全て上位者に100%ある。
つまり、「部下に伝えていたけれど伝わっていなかった。」「その報告は受けていない。」という責任回避は管理者では通用しない。
上位・下位の無いフラットな組織間では、「伝える側」に全ての責任がある。大きな仕事を行う場合、単一組織で望む事は殆ど不可能になっている。情報手段が発達した今、伝達経路が発注経路と完全に一致する場合もそれほど多くない。複雑に関係者が入り混じる中、良好なコミュニケーションを保つためには、伝える側が受け取り手の立場、情報取得能力、手段を配慮して丁寧に連絡する必要がある。一斉メールを送る場合は特に、各社の情報保護や機密情報に配慮した伝達を心がけるようにしなければならない。
これから年の瀬にかけて、当社も忙しくなる。連絡業務が煩雑にならないように、心がけていきたい。