2007年3月28日

信頼関係

ちょろちょろと受けていた仕事の中にPCの設置・設定がらみのお仕事もいくつかあった。あるときお客さんに誘われて相談を受ける。
「もっといい人だけ、できればその作業期間固定にしてやって欲しいんだけど。それに僕もいつも現場に張り付いているわけにはいかないから、リーダーワークもやって欲しい。できれば来期も同じメンバーで引き受けてもらえると最初から色々教えなくても良いからありがたい。」
この声は今も業界の全ての人が望んでいる声だと思う。
我々の仕事は、もともとはベンダーのサービス部門・サービス子会社自身がやっていたものだ。現在で云うと我々のお客さん自身が行っていた仕事。それがバブル処理後期で人員が削減し自前でサービスを全て行う事が困難になり、更に派遣業界が成熟してこの受け皿になった。あるいは運送系の会社が値引き競争を一巡させ、付加価値にシフトした結果、運んで更に設置設定までやるという部分まで担当するようになった。
お客さんのニーズはもっともだと思うけれど、我々がもらっていた金額は6千〜7千円/日。この金額では人は固定しないし、スキルの担保も難しい。そもそも運送をやっているにいちゃんに難しい事を望む事が間違っている気がする。派遣じゃリーダーワークは無理だし、この日暮階層のメンバーが来期どうしているかなんて本人すら予想できない。
最近、漫画喫茶を拠点に携帯一つで日暮をつづける若者の話をよくメディアが取り上げるけれど、パラサイトしていただけで私自身も含めてみんな似たような状況だった。こんな状態ではとても顧客ニーズを満たす事なんて出来ない。でも、ココを満たす事が出来れば、我々も安定した仕事や収入を確保していけるんじゃないか。
これが今の原点だと思う。
仲間に声をかけて、うちの会社で請けた仕事もやってもらうようにしていく中で、気を使ったことがある。とにかく皆びんぼーで、最初は即金で支払うようにした。最初はみんな知り合いばかりだけど「お金がちゃんともらえる会社」という事が何よりの信用となる。最初は殆ど会社の利益を気にしないで、皆が給料日まで待てる体力を作ることに専念した。そのうち支払日は月2回の締め後翌日払いとして、現在は月末締めの10日払いになっている。
一方でお客さん側の口座を作るのも大変だった。上場企業など大きな会社ではいきなり取引用の口座を作ってくれたりしない。まずは実績のある取引会社を中継して・・更にその下請けの下請けの・・といった感じで実際には個人事業主から報酬を受け取る事もたくさんあった。別にどこから振り込まれても良いような気もするのだけど、たくさん経由すると問題点が3つできる。一つ目は支払いの期間が長くなる事。どの会社もリスクをとりたくないから「受け取ってから次の支払日ね」って事をしているうちに実際にうちに届くのは何ヵ月後なんて事もあった。二つ目は各社に手数料として持っていかれて受け取る金額が目減りしてしまう事。これはフィールドワークしかしていない人にはわからないかもしれないけれど、事務だってコストがかかるから中間企業としても当然ある程度はコスト負担分欲しいのだ。三つ目は支払ってくれる会社や人の与信能力。小さい会社や個人事業主だとキャッシュが無いのだ。借金をしている場合もあるし、そうなると支払いの優先順位として我々の会社のようなポッと出の取引先なんて最下位にきたりする。実際に中々払ってもらえなくて危機的な状況になるというのは何度も訪れている。
今当社はキャッシュフローを強く意識した経営をしているので、多少の入金遅れはカバーしきれる。だけど最初の頃は、支払ってから入金確認できるまでの資金繰りが常に悩みのタネだったから、数十万の遅れが本当に恐ろしかった。
さっきちょっと確認したのだけど、初期の頃回収に相当苦労した借金漬けの個人事業主さんのホームページがまだ存在している。元気でやっているのかなぁ。
キャッシュの事で気になっていたのがもう一点。このことを書くと笑われそうなのだが、「予想外の残業」が恐ろしかった。今はスタッフの健康面が心配なので長時間労働や夜勤は出来るだけ避けるようにしているのだけど、当時は数人入っている現場で想定予算よりどんどん加算していく残業代が恐怖以外のなんでもなかった。
ビジネスではお金のやり取りが信頼関係の第一歩。私は怖い思いをたくさんしたので、当社の関係者には当社のせいで資金繰りに困るような思いはさせたくないな。ホントに、これだけは創業以来変わらない気持ちとして持ち続けている。
長くなったので、今日はココまで。
つづく。。

2007年3月27日

起業当初

起業当初の話はみっともないからあまり書きたくないのだけど、多分そこがこれから会社を興そうと考えている人にとっては大事なんだろうから書こうと思う。
会社を創るのは簡単で、維持して成長させていくのが難しい、ってのはよく聞く話だけど、本当だと思う。起業家のきっかけなんて、つきつめていけばわりとカルいケースが殆どだ。崇高な目的や理念というものは、社長として成長していく中で会社と共に磨かれていく。私もそんなパターンだ。
前の会社を辞めた時、資本金規制の撤廃が始まりだしていて1円からでも法人ができる社会体制が出来ていた。私はとりあえず、100万円で有限会社を作ることにした。自分で手続きする事も多分出来たと思うけれど、ココで苦戦すると起業のヤル気も削げる気がしたので素直に専門家に任せる事にした。それでも私側で決める事も多くて初回取引という事で打ち合わせも何度かに渡り多少の敷居の高さを感じたのは確かだと思う。
今思えばそれも正解で、以降の組織変更や増資、一般派遣の許可取得と業務が多忙になってからの依頼では担当者さんとの信頼関係も深まっているのですんなりといった。
さて、会社というハコはできた。
問題は何をするか?だ。
最初に考えていたのはインターネットを使った家庭教師派遣。これは問い合わせばかり多くてお金にならず、収益モデルとして確立し切れなかった。きっともっと上手なやり方があったと思うし、今ならもう少し何とかできるかもしれない。何件かクレームを抱え、実際に全国謝罪行脚が終わる頃、このビジネスは辞めようと思った。
以降、ホームページの作成や証券投資のアドバイスなど、ぽつりぽつりとくる商談をこなしながらピンとくるものは無く、食べていくためにアルバイトをしたり派遣会社に登録してその日暮らしの生活を送った。
外国から出稼ぎに来ている人たちと一緒に携帯電話の組立ラインに入ったり、引越し屋の荷台に荷物と一緒に積み込まれて遠征したり、何日も家に篭ってゲームしたり。今思うと思考停止していたし、いつも何か漠然とした不安と戦っていた日々だったと思う。
あるとき、同窓会の誘いが来た。
私はかつて共に遊び・学び・戦った友人達と共に飲んで語らうのが何よりも好きだ。しかし、その時はあまりにも堕ちた自分をかつての仲間達に見せるのはあまりにつらい心境だった。
環境は変わった。自分自身が変えた。
だけど、自分は変わったのかな。このまま日暮ですごすのかな。
名刺をはじめて作ったときはあれ程誇らしいと思った「代表取締役社長」の肩書きを人に見せるのが、どうにもならないほど恥ずかしいと思った時代だった。
(つづく)

2007年3月26日

時間管理

「PRESIDENT」は、いつも興味深いテーマでビジネスに切り込みを入れる。
今回は「時間ない病の研究」という主題で、各経営者のタイムマネジメントについての考え方が特集されている。
経営者になると時間の使い方は100%自分の思い通りになる。前職サラリーマンだった頃は、無駄な会議や非効率なシステムに対して不満をいつも抱えていたものだが、今のポジションから考えると報告は吸い上げたいし分析もしたい、できればフェイストゥフェイスで話もしたい。だからスタッフのコア業務以外にも時間をとってもらうことになる。
前にも書いた事があるかもしれないが、タイムマネジメントを心がけている人というのは、他人の時間を大切にする。お客様の時間はもちろんだし、協力会社の方や同僚・部下に至るまできちんと人の仕事時間を尊重する事ができるのだろう。
また、管理者になれば電話や相談も受ける頻度・時間が多くなり、じっくり考えたり難しい分析をしなければならない時に集中できる時間の確保が難しくなる。意識的にコアタイムを作れない事には濃密な仕事はできないだろう。
前にも紹介したかもしれないが、私のお勧めの流儀は、「この時点ですぐやる」のポイントを作ること。本当は、全ての案件を滞留させずに即決していく事が望ましいし、かといって重みづけされている優先順位もある。優先順位だけで処理を進めれば、処理中に増え続ける新しい案件によって順位の低い案件は永久に処理されない事にもなりかねない。
だからこそ、「この時点で全てをクローズさせる」というポイントを作るのは大事。毎日締めてももちろんいいと思うし、週末に纏めてもいい。
今回の記事、様々な経営者がそれぞれのタイムマネジメントに自信を持って取り組んでいるんだなぁと伝わる内容が多くて参考になった。いくつかの考えが自分のこれまでの考えとミックスアップして新しい自分なりのビジネススタイルが出来上がっていく。
私にとって「PRESIDENT」とはそういう雑誌。

PRESIDENT (プレジデント) 2007年 4/16号 [雑誌]

2007年3月24日

アンフェア

ライブドアの判決と日興の上場維持について、きな臭さを感じているのは私だけじゃないはずだ。
正義を振りかざしたいわけじゃないし、政治的な思惑や未熟な司法・市場関係者・既得権者のあり方についても納得は出来ないけれど理解はできる。
しかし、今までマスコミの捉え方や全ての手法が違法だったかのような論調の偏った堀江叩きには正直残念さを通り越してあきれ果てた感じを持っていた。
そんな中今日、田原総一郎の記事を読んで、マスコミ関係者の中でも公平にあの事件を評価できる人がいる事を知る事ができてちょっとホッとした感じがする。
金融庁の監督権限は不良債権処理の目処が立った後くらいに、本来は縮小されるべきものだったのではないだろうか?
公的監査の行き過ぎた権限増大は、保険の未払いやリスク商品の説明責任や情報管理・開示などにシフトしていき「不祥事」として業務停止などを乱発しているけれど経済活動全体からいうと明らかにマイナス要因になっていると思う。
特にライブドア事件以降の新興市場は、規制とコストでがんじがらめに縛られていて本当に魅力が無い。最近起業家仲間で上場にメリットを感じている人は殆どいないし、これからはマネジメントバイアウトやエンプロイヤバイアウトでマーケットから抜け出そうとする有望事業はますます増えてくると思う。
少なくても日興のような老舗であればどんな不正を行っても許されるのに、ライブドアのようなグレーゾーンでのマナー違反で実刑までもっていかれてしまうようなアンフェアな現状ではいかんともしがたい。
日興コーディアル上場維持が決まった後の日経新聞の対応もあまりに酷かった。大本営の発表を諾々と流すだけがマスコミの役目ではあるまい。筋の通らない話であれば、「そりゃ変だ」といえるメディアが育っていかなければアンフェアなルールがまかり通る社会は直っていかないと思う。
大人ってズルいね、って子供達から云われない社会を繋いでいかなきゃね。

2007年3月23日

ウェブMA

最近は、ウェブサイトの売買を仲介する業者が出揃い始めて、インターネットビジネスは大小様々な規模で事業の譲渡が可能になっている。
ベンチャーでは新事業への挑戦、事業ドメインの集中等ものすごい勢いで進んでいる為、初期の手探りの苦労を省くために成功モデルそのものを買い取ったり、他の事業に集中したい時に既存ビジネスを換金したりできる仕組みというのはもっともっと整備されてきて当然だと思う。
私も最近はあちこちで売りに出されているサイトを見ていると、「このサイト欲しいなぁ」と思ったり、「このくらいなら自分も作成できそうだけどこんな価格つくのかなぁ」と思ったり、色々な想いが駆け巡りあっという間に時間が過ぎる。
でっかくやるかニッチで一番を取るかしないと、かかった時間が金額とつりあわないよねぇっと思っていたインターネットの世界、参加の方法が一つでも増えるとしたら意義としては大きいんじゃないかな。