2005年11月1日

《資本金1000万円》

資本金1000万円。
ほんの少し前までの事だったが、株式会社設立のハードルは我々コネ無しカネ無しの青年には果てしなく高かった。大体普通にサラリーマンをやっていて、1000万円が自由に使えるようになるのはいったい何歳なんだろう。もしかすると一生そんな時期は来ないのかもしれない。だからこそ、「株式会社」の創業者というのは、これまで普通の感覚ではめぐり合えない人種だった。
現在の我々の状況は違う。なんと1円から株式会社を作ることが赦され、来年には「5年以内に1000万まで増資しなさい。」という特例扱いも無くなる。
私自身特例に乗って有限会社を設立し、一年と少しでノルマ300万(有限会社であれば300万)まで増資した。特例制度の利用者であるから、鉄の意志で300万の資本金を溜めて起業してきた先達に比べれば体制や準備に甘い点もあるかもしれないのだが、それでも「誰でも株式会社の社長になれます」という方針には賛成できない。
会社を経営しているものにとっては等しく感じているものに、取引先の信用リスクというものがある。BtoCのように原則即日現金取引であれば問題は無いが、法人同士の取引では売上と受渡には期間的にズレがあるのが一般的であるし、大きな金額になって支払ってもらえなければ一気に経営危機になる。未払いリスク程恐ろしいものはないのだ。
大企業であれば、取引先の財務状況などは当然把握しているし、信用リスクについても個別に調査できる。だが、我々のような中小企業には信用を計るためのコストはかけられない。そこで、大きく「会社形式」で見る事になるのだ。当社であっても可能な限り取引先は法人企業、できれば株式会社、可能であれば上場企業としたいと思っているし、私が起業した際に法人にこだわった主要因もこのあたりの信用にある。また、ホームページに財務諸表を載せているのもオープンに当社の信用を判断していただきたいからである。
さしあたり起業のハードルは低くして、努力しない企業は退場してもらうというこれまでの方針は制度の利用者である我々から見ても自然だったと思う。当社も株式会社に組織変更する事については前向きに考えていきたいが、可能な限り早い時期に資本金は1000万まで増資しなければならないと思っている。
それにしても。やはり1000万円のハードルは高い。先人達の努力には頭が下がる。