問題提起は、ある意味シンプルで行いやすい。目に付いた不満点を分析し対策を練り、行動に移すというものだ。
そして、結果をまた評価する。その際、評価はまたついつい不満点・改善点に集中してしまい、「満足に出来た」と思うことを全面に出す事はあまりない。
もちろん現状に満足して緩むという事はあってはいけないのだが、あまりにいつもいつも、「ここを何とかしなければ!改善だ!」と云っているのでは、上手くいっていることもあるのに、それが皆に伝わらなくなってしまうのだと思う。
今期の総括を行うにはまだ早いが、ここまでやってきて当社が良く出来てきているなぁと思うことを書いてみたい。
1.スタッフ個々の「会社」としての意識
2.雇用形態の改善など「会社」としての組織体制
3.受注企業の多様化による独立性の確保
4.利益体質確保による財務体質の健全拡大化
5.採用形態の多様化による人材確保のノウハウ増加
6.同一スタッフを長く使う事による品質やノウハウの向上
7.依頼企業の信頼向上による資金経路の安定化
あげればきりが無いのだろうが、一歩一歩改善しているし、どれもスタッフやお客様の協力あってこその進展である。
特に最近はスタッフの皆と話をしていてもトライアンフという会社の中で自分はどんな役割なのか、と云う部分をしっかり把握していてもらえるんだと感じる事はとても多い。経営者としては皆がそれぞれ会社を支えているんだという自負や責任感を持っていてもらえるのはありがたいことだし、力強い支えになっていると実感できる。
まだまだ発展途上でとても現状に満足できる状態ではないが、これからも一歩一歩階段を昇っていける企業でありたい。

ある企業の事だが、最近二次外注を認めないという動きがある。取引先も一社にまとめたいとの事だ。
確かに我々の業界では、縦串横串が多重にあって一見責任の所在が見えなくなりがちである。また、クリアでない法律の遥か手前で自社内のラインを引こうという気持ちも理解できる。
しかしながら、外注先の社内体制や雇用方針、人事に口を出すのは正しいといえるのだろうか?金額を考えれば無理な注文も、何とかしている業者があるとの事。聞けば、発注元の幹部の後輩だとか、発注担当社員が独立した会社だとか。コネクションが何もかもいけない等と青臭い事は云いたくないが、それならば単価を削って生じる障害も我々とは違った解決策が取りうるだろう。
それでも、品質の落ちる身内を使えばコストは落ちるがサービスの質も落ちる。仲間内で何もかもナァナァにしてしまえば風通しの悪い企業風土が出来上がる。担当者はご満悦かもしれないが、企業体としての価値は落ちるだろう。
蛇足だが、当社では請ける時も仕事を出す時も、数社に分けたほうが独占するよりも良いと思っている。比較対象があればこそ、相対的に企業の良さが分かるのだし、健全な交渉により単価も決まる。仕事の責任ラインも明確になる。
多様な価値観が認められなくなった企業は権益と腐敗にまみれるのも早く、そこから脱出するのは困難になる。
マネジメントをする際に、「コスト削減」を叫べばよい時代は終わった。徐々に世の中が品質重視に傾く中、企業はどのようなアライアンスを目指すべきか?
我々は「仕事」で応えるし、健全に競争する。そしてきちんとコスト対効果を示せれば、きっとビジネスは活きると信じる。

我々のようにパワーピラミッドの下のほうで作業するスタッフには、いつも目の前にいるエンドユーザさんに喜んで欲しいと思う気持ちが強くある。
もちろん、予算の都合やサポートの適応内外の区分というものは、上流マターで決めるべきものであり、指揮系統をはずれた勝手な振る舞いは作業員には許されない。それは重々承知である。
しかしながら・・と思うものである。
タイトルの言葉は、営業先のベテランスタッフが何気なく使った言葉だ。長年下流で働いてきたその人にはもちろん業界のルールというものは良く分かっている。
しかし、サービスの本質を考えた時、現場で長く働く人のつぶやくこうした言葉にこそ、どのようなカリスママネージャの唱える格言よりも重い意味があると感じてしまう。
今日、一日この言葉が耳の奥から離れない。

2006年4月10日

《無様だ》

管理者をやっていて一番「無様」だと感じるのは「遊兵」を作って自らがパンクする状態だろう。本人は必死なのだがコストがかかる部隊の費用は無駄に費やされ、効果は自分たった一人の労働力に限定される。組織としてはこの上なく無力な状態だ。
この4月は完全にこの無様な状態が続いている。トラブルの後始末と事務処理で自分だけ張り付き状態になり、肝心のスタッフに振るための仕事を取る時間も仕事を振るために確保すべき資金を作る時間も取れずにいる。
今は人件費をある程度固定化してスタッフの生活を守るべく舵を切り始めたところだ。内政部が厚くなり、もっとしっかり責任が分担できるようになれば、もっともっと効率的な組織運営ができるだろう。
この無様さを抜ける特効薬は、なんだろうか?
思うに、「もう一歩のサービス」になるのだろう。パンクしている状態で現状をただただ流していくだけでは悪循環になる。えてして陥りやすいこのワナからはたった一つの大きな成功例によりトレンドをチェンジさせられるものだ。何かターゲットを決めて一つだけ大きく信頼を勝ち取れる成功例を作ろう。
私一人の力では、トレンドを変えるだけの力となりえない。スタッフはもちろん、私の記事を読んでいただいているお客様にも「もう一歩お仕事で関係している相手をフォローするサービス」を心がけていただきたい。
無様な姿を連続で見せるのはつらいものだ。せっかくの4月。ここらで明るい話題を作っていけるといいな。

2006年4月9日

《7S分析》

先日取引先の方と餃子を食べに行った。
同じ仕事を同じようにやっているのに、進もうと考えている方向や「仕事」に関する「人」の関わり方についての考え方に大きな差があるな、と感じた。
私自身は「現場」を重視して柔軟で自由度の高い経営を志しているし、スタッフに対する期待や考え方についてもより現実に即した方針で臨みたいと考えている。それでも「会社」としての方向を自社に関わる人たちに示す必要はあると思う。今回はそのバックボーンを作るために7S分析を行う事にしよう。
Shared Value
企業の価値観についての共有。当社では、スタッフをすり潰すような仕事の仕方を是としない。また、あまりにもエンドユーザに対して恥ずかしい品質であれば直接のクライアントの要望でも聞き届けられない事がある。だからこそ、直接のお客様にとっては「使いづらい」と感じる点があるかもしれない。それでも、サービスを担当するスタッフとそのサービスを最終的に受け取るエンドユーザが納得する「普通の仕事」をする事を我々は目指したい。
Strategy
共有された企業価値感を具体的に実現するための戦略。そして経営資源をどのように配分するのか。我々は複数の、しかし細かくサポートしきれる範囲のお客様に対してサービスを行う。言葉を変えると、たとえ利益が最大限に上がるとしても1社のお客様だけに集中的にサービスを提供する事はないし、本音で付き合えないほど希薄な関係でたくさんの会社と取引する事はない。どのお客様に対してもけして何も反論が許されないような「下請業者」となって利益を上げるよりも、「協力会社」として自社のサービスにプライドをもって仕事をする戦略で臨みたい。その上でお客様の提供するサービス全体の品質が上がるようにきめ細かい丁寧な仕事ができれば、お客様にもきっと支持していただけるだろう。
Structure
戦略を実現に落とし込む組織。柔軟な働き方を実現し、集めた人材をグループとして充分に力を発揮させるには、人を組織化していく必要がある。現場レベルでの責任者が持つ権限やもっと大きく組織体で考えた雑務を含む役割分担などは、社員層の厚みを増してきた最近ようやく前向きに取り組める状況が出来上がりつつある。
Staff
組織を構成するスタッフ。これまで創業期を築いてきた我々役員二人と、これまで限定された現場ワークの業務委託から徐々に社員化して基幹業務にも取り込んでいっている創業を支えてくれたスタッフ達。更に新入社員や当社のバックオフィス業務や最前線を固めてもらっている協力会社の人達。
社業と共に関わっていただく人々も増えてきている。
Skill
スタッフに期待する能力。急激に拡大・変化する業務の中で、社業に関わる人達に望むスキルも急速に変化してきている。半年前までスキル的に問題なかった人材であってもこれからはキャッチアップしていく必要性があるケースもあれば、これまで活きてこなかったスキルを今フルに使ってもらっているケースもある。協力会社や協力スタッフに望む事も同様で、急速に変化する当社の状況の中で長く付き合っていこうとするならば、変化に対応しながら協力体制を変えていくほかは無いと思う。
System
能力を評価するシステム。当社が全く不透明であるのがまさにこの部分である。一つには「最低限食える事」を何とか達成しようと闇雲になっていた部分でもあるし、当社やクライアントの都合に振り回された交渉や状況の結果でしかなかった部分とも云える。会社全体で上げた利益をどのように配分するか、会社に対してどれだけ貢献してきたかをどのようにシステム化していくか。これは来期以降の重要な課題として現在は先送りしている状態である。望ましい方向は、この事項に関してはトップダウンというよりもボトムアップして集約していく方針で臨みたい。
Style
システムをベースに実際に外に見える当社のコーポレートカラー。私の思いを理想とするならば、現実にお客様から見た当社、スタッフや協力会社から見た当社というのが、このスタイルにあたる。結局のところ、この部分こそが当社の「コーポレートカラー」と呼ばれるものになるのだろう。「仕事が早くて丁寧だね。」「一緒に働く人達も親切で明るくて働いていて楽しいね。」「必要な資料もちゃんと整えてくれるね。」「困った時には何とかしてくれるね。」そんな会社に見てもらえるように私は舵を切っていきたいと思う。
マッキンゼーの7Sは、人と組織の関わりについて考えるには適当なツールだ。中華屋で適当に話していた内容を自分なりにまとめてみたが、手をつけていく順番などは行き当たりばったりよりも今回のようにまとめながら進んだ方が大きくぶれなくていいだろう。形式だけ、ハードウェアだけ整える事はたやすいのだが、人の絡む問題は丁寧に進む方が望ましい。ただ時代がのんびりする事を許さないのであれば、できるだけ効率的に。